「千住・縁レジデンス」選出アーティスト&推薦者 インタビュー
二人三脚で勝ちとったレジデンスの座。
今回は、選出アーティストと、その推薦者の熱い思いをお届けします。
【第1回】友政麻理子さん(美術家)× 白坂ゆりさん(アートライター)
Q. まず、白坂さんが友政さんを推薦された理由を教えていただけますか?
白坂:音まちのイベントなどを取材させていただいていたので、その時の雰囲気からどんなアーティストだと相性がよく、化学変化が起こりそうかを考えました。私自身が松戸に住んでいるので、同じ常磐線沿線の北千住は身近でもあります。友政さんは、コミュニケーションをテーマに、参加者を主体とするプロジェクトを行っているので、まちの見え方が変わったり、何かアクションが起こったりするのではないかと思いました。あと、作家自身がちょっと庶民的な感じがいいかな? と(笑)
Q. 友政さんは、白坂さんから推薦のお話をもらった時にどのように思われましたか?
友政:私は全力投球型なのですが、まさにその時、新潟(7月18日〜10月12日開催の「水と土の芸術祭2015」に参加)でいっぱいいっぱいで……。できるかなって不安だったんですが、縁とか音とか見えないものを題材にして、人が行き来し、そこから何かが生まれるかもしれない、そのコンセプトがすごくおもしろいと思っていました。なので、どうにか参加できないかと(笑)。選出されてとても嬉しかったです。
Q. 白坂さんは何かアドバイスはされたんですか?
白坂:千住には個性的なお父さんが多いという印象がありました。それで、初対面の年輩男性と「父と娘」という設定で食事をする映像シリーズ《お父さんと食事》が合うのでは? と提案しました。会話や仕草から、千住のまちの歴史も浮かび上がればなおいいなと。
また、北千住には戦後たくさんの映画館があったらしいということも伝えていたのですが、友政さんがまちのリサーチ中に、詳しい方に直接お話をうかがえたんですね。私は同席できなかったのですが、そこから友政さんが、千住の人々でつくる映画プロジェクトの案を膨らませていったんです。
Q. 11月からの滞在制作に向けて、意気込みをお聞かせいただけますか?
友政:私はコミュニケーションを扱っているにもかかわらず、実はコミュニケーション下手で、人前だと、もう手汗をかきはじめちゃうくらい緊張しやすいんです。でも出会いとか、ちゃんと人と付き合うってことが得意ではないからこそ、そういうことを考えます。前回、千住をリサーチさせていただいた際に、飛び込みで入ったお店のおじさんが手作りの地図を見せてくださったり、街の駅の方が色々な話をしてくださったり、気を遣ってくれてるとも感じるけど、受け入れてくれているような雰囲気も感じる。「いいまちだな」と思いました。
“私が初めて作る何か”ではなく、もともと千住にあるけれど、みんながいつもは意識していないかもしれないような、人の繋がりとか人との関わり方とか、千住の方がもっているものを再発見したり。そこから千住の人たちと一緒にどのような明るい未来を描いていけるのかを考えていきたいなと思っています。
友政さん、白坂さん、ありがとうございました!
インタビュー日:2015.08.08
(撮影:松尾宇人)
【第2回】久保ガエタンさん(アーティスト)× 難波祐子さん(キュレーター)
Q. まず、難波さんが久保さんを推薦された理由を教えていただけますか?
難波:今回のコンペでは、コミュニケーションを制作のベースにしているアーティストが求められていると理解していました。
でも、一方で、普段私たちが生活しているなかで思いもよらなかったような視点や、考えもしなかったようなことを提案したり、気づかせてくれたり、驚かせてくれたりすることがアートであり、アーティストの仕事だとも思っていました。そういうアートの力をワークショップなどを通じて地域の人たちとコミュニケーションをとりながら作品をつくる方法論に終始せずに、別の方法で引き出してくれるアーティストでもいいのではないかという思いがありました。
音まちが音にこだわったプロジェクトだったこともあり、音をなんらかの形で使うアーティストで、なおかつサウンドスケープなどのまちの音をストレートに使うのではなく、全然違う方法で千住の音風景や音に関わることを作品化してくれるアーティストって誰だろうと考えたときに、久保さんのことがすぐに頭に浮かびました。
久保さんは見えないもの——音であるとか振動であるとか、気とかオーラとか、オカルト的なそういうものも含めて——一生懸命形にしようしている。ある意味無骨で荒削りなんですけど、そのイマジネーションの力がユニークなアーティストで、これを千住と結びつけたらすごく面白いことになるんじゃないかと思ったのが一番の推薦理由ですね。
どうなるかわからないけど、とにかく面白いものができると思います。
Q. 久保さんは、難波さんから推薦のお話をもらった時にどのように思われましたか?
久保:僕もこの話をいただいた時、やはりワークショップ的なものが求められているかのように思いました。過去の音まちのプロジェクトをみても、参加型というイメージが強くあったので、僕のスタイルからかけ離れているのでプラン出しに悩みました。しかし、難波さんに相談して参加型以外にもコミュニケーションをとる方法があることを教えてもらえたおかげで、素直に始められました。そういったこともあって、物質主義的なタイプの作品でもなく、ワークショップ型の作品でもなく、リレーショナルなリサーチを通して作品が生まれる、今までの僕のスタイルとは違ったプランを出すことができて、とてもワクワクしています。
Q. 秋からいよいよ制作が始まるわけですが、意気込みをお聞かせいただけますか?
久保:今までの音まち千住とは違った風景を見せたいと思っています。予定調和を崩したリレーションからうまれる「縁」をうみたいなと思っていいます。
ちなみに今回おばけ煙突を軸とした作品を作ります。煙突の思い出がある方、煙突の一部を使って造られた校庭の遊具で遊んだことのある方、跡地にできた大学のモニュメントに思い出がある方、千住の昔の変わった物をお持ちである方、少し離れてますが浅草火力発電所のことなどをご存知の方、ぜひとも一度お話を聞かせてください!(少しでも思い当たった方は今すぐ音まち事務局にご連絡を!)
久保さん、難波さん、ありがとうございました!
インタビュー日:2015.08.08
(撮影:松尾宇人)
次回は、審査員の方々のインタビューを掲載予定です。お楽しみに!