【記録】大巻伸嗣「Memorial Rebirth 千住」

無数のシャボン玉によって、見慣れたまちなみを光の風景へと変貌させるアートパフォーマンス作品。千住地域をリレーしながら、参加者の輪を広げ、さまざまな縁をつなげていく。
初めての開催は、雨の降る肌寒い3月だった。近所に住む子供たちが色とりどりのレインコートに身を包み、会場の千住いろは通り商店街を訪れ、雨空に透き通るシャボンに彩りを加えてくれた。冷たい雨の中、何より集まった人々の笑顔に心が温まる、かつての賑わいの記憶が蘇るひと時。
現代美術家の大巻伸嗣による「Memorial Rebirth(メモリバ)」は、無数のシャボン玉で見慣れた景色を変貌させ、記憶を呼び起こし、新たな記憶を創り上げるアートパフォーマンス作品である。これまで国内外のさまざまな場所で展開されてきたが、大巻は千住での「メモリバ」は一度きりにはせず、地域から地域へリレーのバトンのようにつないでゆくことを願った。回を重ねるごとに、縁が結ばれていきますように―。
1年目は千住で初めての試み。右も左もわからない「音まち千住の縁(音まち)」のスタッフはいろは通り商店街をはじめ、多くの地域の方々に支えられながら準備を進めていった。“千住で「メモリバ」をリレーする”というイメージを抱えて臨んだ2年目、地元の人と一緒に選んだ場所は、千寿本町小学校の校庭。いろは通り商店街から、小学校近くの千住五町会へ、メモリバの「引き渡し式」も開催された。この年は、「シャボン玉+盆踊り=しゃボンおどり」なる新たなアイディアが登場。盆踊りの盛んな千住で、もっと参加者同士がひとつになれるようにという大巻の発案から、新しい盆踊りを制作した。振り付けは、東京藝大の卒業生のグループ「くるくるチャーミー」と千住の日本舞踊の先生が協働で行い、シャボン玉を追いかけたりつかまえたりする振りの、世界にひとつだけの盆踊りが完成した。
千寿本町小学校の校庭には、中央に大きなクスノキが生えている。その木を囲むように、会場いっぱいに広がるしゃボンおどりの輪。光を受けて色とりどりに染まるシャボン玉に包まれて、晴れやかな空に、みんなの記憶が昇っていくようだった。
2013年の第3回。回を重ねるごとに新たな挑戦を続ける「メモリバ」。今回のチャレンジは、夜の開催だった。常東地区での開催で、千住の東側と西側がひとつになる1日を生み出す大きなチャンスにしようと、前回の踊り手の方々に加え、新たに常東地区の踊り手のみなさんにも声をかけた。
また、シャボン玉と踊る人々を照らし出すため、千住にある東京電機大学の井筒正義先生と学生たちに協力を依頼し、夜の校庭と校舎にプロジェクターで映像を投影する共同企画が実現。投影する映像は、ワークショップを開催し、公募で集まった参加者が「私の千住」をテーマに撮影した写真を使って制作した。
そして開催当日。宵闇に輝く無数のシャボン玉の中で、輪になって踊る人々。夜の校舎や校庭一面に投影される映像は、シャボン玉をさまざまな色模様に照らし出し、夜の「メモリバ」をより華やかに賑やかに彩った。
Memorial Rebirth 千住いろは通り
2012年3月17日/会場=千住いろは通り商店街/音楽=安野太郎、新見桂子
Memorial Rebirth 2012 千住本町
2012年11月24日/会場=足立区立千寿本町小学校 校庭/協力=くるくるチャーミー (大西健太郎、富塚絵美、松岡美弥子)、日本舞踊師匠 山口静江、新舞踊 枝川みつよ、千住五町会のみなさま
「Memorial Rebirth 千住 2013 常東」映像作りワークショップ
2013年9月28、29日/会場=東京電機大学東京千住キャンパスほか/協力=東京電機大学未来科学部ロボット・メカトロニクス学科

Memorial Rebirth 千住 2013 常東
2013年10月19日/会場=足立区立千寿常東小学校/協力=阿部初美、おかめひょっとこ元気連、ガーディアンシップ北千住、学園通り商店街、くるくるチャーミー(大西健太郎、角銅真実、田中文久、富塚絵美、松岡美弥子)、千住旭町会、千住旭町自治会、千住東町町会、千寿常東小学校PTA、千寿常東小学校開かれた学校づくり協議会、東京電機大学未来科学部ロボット・メカトロニクス学科、花実会、日ノ出町自治会、柳原北町会、柳原西町会、柳原東町会、柳原南町会、柳原有志の桜会