【記録】イミグレーション・ミュージアム・東京 −不思議な出会い−
日本に暮らす外国人の生活に根ざした異文化を紹介・共有するプロジェクト。外国人の経験やエビソードから得た物語を素材に、日本人の疑問を加えて独自の作品が生み出された。
「国の匂い」について考えたことはあるだろうか。ある韓国人留学生は日本の畳の匂いから、宇多田ヒカルを思い浮かべるという。「イミグレーション・ミュージアム・東京(IMM)」にはその発想から発展した、匂いをモチーフにした作品がある。外国の人々は日本のいろいろな匂いを嗅いで、何を思い浮かべるだろう。異なる文化に暮らしていたからこそ気づく違和感を独自の手法で展示した。
想像もできないような文化の融合は実際は常に行われていて、我々が思う日常が非日常に変わるその境目は、実際はとても近く、手の届くところにこっそりと秘められている。そんな違和感をもとに作品をつくりあげていくのが「IMM」だ。
このプロジェクトは日本で暮らす外国人の生活や、言葉だけでは伝えきれない想いを、現代美術の手法を用いて表現する。美術家・岩井成昭の監修のもと、外国人の日本での経験を材料にした作品制作を行うのは、アーティストに限らない、一般の人々だ。
今回参加した人々は、大学生、会社員、ダンサーなど顔ぶれもさまざまである。地域に暮らす外国人へのリサーチとミーティングを何度も行い、写真・映像などの作品が少しずつつくり上げられた。参加者が持つさまざまな経験と、外国人との交流が結びつくことによって、観る者の新しい価値観の発見へとつながっていく。
外国語を日本語に聞き間違えてしまったり、その逆だったりといった「空耳」の経験が誰しも一度はあるだろう。今回はそうした聞き間違いと、同じ発音でも意味の違う外国の言葉を集めた映像作品を制作した。この作品『スカイ・イアー』は観ていると、思わずニコリと微笑んでしまう。
そしてウクライナの女性が日本での日常を通して感じた「違和感」を写真で表現した作品では、ひとりの女性の目線から、文化違いによって異なる日常の捉え方が我々の目に映る。
IMMは、文化の違いをステレオタイプに分類するのではなく、個人個人の視点から、その奥底に潜む違和感をすくい上げる。それを可視化した世界は、我々にたくさんの発見をもたらしてくれる。



イミグレーション・ミュージアム・東京 不思議な出会い
2014年2月15日〜23日/会場=日の出町団地スタジオ/参加作家=上本竜平+カタノヴァ・カテリナ、井出友実+鶴巻俊治+伴優香子、岡野勇仁+佐藤友梨+宮本一行/企画・監修=岩井成昭/設営協力:村井啓哲