【記録】音まちトーク
まちで活動する多様な立場の人々をゲストに招くトークシリーズ。
現場で生まれたさまざまな問いをテーマに、参加者とともに新たな“まちづくり”について語り合った。
音まち千住の縁(音まち)」の活動を始めてから、私たちはアーティストとともに、まちにいろいろなアプローチを試みてきた。そんな日々のプロジェクトの現場で生まれた「問い」を、ゲストとともに「音まち」に関わるみんなで学び、語り合うための場として始めたのが「音まちトーク」である。
2012年11月の「音まちトークねほりはほりスペシャル」では、日常編集家・音楽家のアサダワタルとグラフィックデザイナーの大原大次郎を招いた。全国各地でジャンル横断的な活動を展開する二人のトークは、それぞれの専門性に応じた内容の濃いものでありながら、コミュニケーションのあり方に着目している点で似ていた。それは、これまでにない新しい縁をつないでいくことを目的のひとつにしている「音まち」の活動ともつながる。
中でも特に印象的だったのは、「面倒をいったん引き受ける」ことによって、その場に創造的なコミュニケーションの回路を開こうとするいくつもの実践だった。例えば、旅行では誰もがすぐに写真を撮る。後で話をするとき、言葉で説明するよりも、旅先で撮った写真や動画を見せる方がずっと情報量が多く簡単に伝えることができるからだ。しかし、旅に「今回は撮影はNG」というたったひとつの「面倒なルール」を設けるだけで、伝えるためのたくさんの対話と表現が生まれ、コミュニケーションを誘発し、旅の質はまったく違ったものになるという。
空から音を降らすオーケストラ、だじゃれと音楽の新しい表現、地域の踊り手たちまで巻き込んだメモリアル・リバース。どれも一筋縄ではいかず、ある種の「面倒」はどの企画にもあっただろう。そうした面倒を引き受けて、プロジェクトに関わってくれた仲間が、千住に縁もゆかりもなかった私たちをまちに引き入れてくれた。ふと気がつけば、忘年会には60名以上の人が参加してくれるまでになった。このプロジェクトが何をしようとしているのか、明確な画や言葉を提示することはまだできないが、関わる一人ひとりの顔が、このプロジェクトの表情をかたちづくっている。
実るものも見えるものも、関わる人それぞれに違うだろう。「音まちトーク」は、イベントが持つ熱気とは異なる、じわじわとした熱を人やまちに伝えていく場所。そしてそれぞれの実りを交換し合い、まだ見ぬ新しい場づくりへの種を巻き続ける場所でありたいと思う。
音まちトーク 「ねほりはほり」
第1回 2012年7月8日 スピーカー=舟橋左斗子(足立区シティプロモーション課)
第2回 2012年8月19日 スピーカー=たこきょうこ(TERATOTERA事務局)、ヨネザワエリカ(墨東まち見世事務局)
第3回 2012年9月23日 スピーカー=賀山耕一(千住芸術村)、三浦一朗(東京未来大学)
第4回 2012年12月22日/会場=河原町稲荷神社会館
第5回 2013年2月16日 スピーカー=遠田節(足立区生涯学習振興公社)、森隆一郎(東京文化発信プロジェクト室)
第6回 2013年3月31日/会場=東京藝術大学 千住キャンパス 第7ホール
(第1〜3回、第5回は音う風屋で開催)
音まちトーク ねほりはほりスペシャル「アサダワタル×大原大次郎」
2012年11月10日/会場=北千両/スピーカー=アサタダワタル、大原大次郎
音まちトーク 「のらづくりプロジェクト」
第1回 2013年8月24日/会場=安養院/スピーカー=佐々木誠、寺井元一
第2回 2013年11月30日/会場=タカラ湯/スピーカー=中崎透、遠田節
第3回 2013年12月23日/会場=河原町稲荷神社会館
第4回 2014年3月30日/会場=東京藝術大学 千住キャンパス 第7ホール