【記録】友政麻理子「知らない路地の映画祭」
リサーチ展示|平成28年1月23日(土)〜3月13日(日) ※土日月・祝日のみ開催
時間:10:00〜19:00
会場:たこテラス(東京都足立区千住4-20-6)
料金:無料
自主映画上映|平成28年3月11日(金)、12日(土)、13日(日)
昼の部 14:00〜(開場13:30)
夜の部 18:00〜(開場17:30)
※3月11日(金)は夜の部のみ開催
※各回の上映内容は同じ
会場:千住庁舎 会議室〈旧ミリオン座〉(東京都足立区千住仲町19-3)
料金:無料(各回先着30名)
<プロジェクトの変遷>
平成27年6月15日 友政麻理子による千住リサーチ
8月8日 オープンコンペティションにおいて選出
11月23日 企画説明会開催
〜12月28日 千住地域の路地散策、作戦会議などを続ける
平成28年1月4日〜 シナリオごとにチームをつくり、撮影開始
3月11日〜3月13日 自主制作映画祭《知らない路地の映画祭》開催
■《知らない路地の映画祭》
第1回目の「千住・縁レジデンス」招聘作家のひとりである友政麻理子は、千住に滞在しながら、一般の参加者とともに自主制作映画に取り組んだ。
今回の映画づくりのルールはひとつ「映画の中で千住という地名を出してはいけない」。千住を知らない町として捉えることで、新しい町の姿を浮かび上がらせることを制作のコンセプトとして掲げた。
企画説明会に集まったのは約15人。友政からの説明に、この時はまだ参加者もお互いの様子を伺いながら、緊張や不安を浮かべていた。
その後、2015年12月までは参加者と共に地道に千住を散策。時には鍋を囲みながら自身の参加理由について語らい、早朝に行われる足立市場のセリを見学、シナリオ合宿も行った。その過程を通して徐々に参加者たちも打ち解け、散策で得たアイディアや、書きたいシナリオ、それぞれの意見を言い合えるようになっていった。
映画制作は年をまたぎ2016年1月、彼らはより積極的に映画制作を進めていく。この頃になると、それぞれの役割分担や、上映会に向けてのスケジュールも立ち始め、それぞれが時間を見つけては拠点に集うようになってきた。次々と新たな参加者も加入し、同じく千住を舞台に活動する「千住ヤッチャイ大学」などとも繋がり、芋づる式に〈縁〉が拡がっていった。
そしていよいよ2016年3月11日から13日、新たな映画が紡がれる3日間、自主制作映画祭《知らない路地の映画祭》が開幕した。
その会場となったのは、かつて映画館「ミリオン座」があった場所。現在は区の施設である千住庁舎となっている。参加者たちは会議室を映画館に見立て、部屋のレイアウトを試行錯誤しながら考案し、実際に自分たちで設営した。千住を散策中に発見し、映画の中でも重要な素材となった「キデンキ」も手作りで制作。影絵を用いたり、実物の洗濯物や自転車、鉢植え、猫避けのペットボトルなどを組み合わせて室内に見事な“路地”を現した。
また会議室へ続く廊下には今までの制作風景を写した写真や、当時、ミリオン座で配布されていた資料などを掲示。参加者が自主的にミリオン座についての思い出を住民にインタビューし、そのコメントをまとめたパンフレットも配布された。12日、13日にはチンドン隊も呼び込みに参加。約半年間でゆっくり紡がれた〈縁〉によってあたたかな雰囲気が会場を包んだ。
会場の様子
会場内に路地があらわれた。キデンキの柔らかな光も再現されている。
廊下には撮影の様子や、リサーチ結果なども展示した。
路地を抜けるとスクリーンが登場。参加者たちが制作した自主制作映画に観入る観客たち。
映画祭終了後、会場を訪れた人々からは、「地元をまた違った視点で再認識できた」「せわしい毎日から一時解放されました」などのコメントが届き、参加者たちは次の映画制作について夢を膨らませている。音まちの企画として始まったものが、その手を、さらには作家・友政麻理子の手さえも離れ、参加者たちの《知らない路地の映画祭》となった瞬間だった。
友政は、全体のコーディネートをしながらも、彼らの制作過程や映画祭を一歩引いた立場からレンズを通して見守ってきた。千住での自主映画制作がどこへ向かい、参加者のコミュニケーションが何を生み出したのか。友政によって《知らない路地の映画祭》のドキュメンタリーが、描き出されようとしている。
開場前の最終ミーティングの様子
友政はそれを少し離れたところから見守る
■リサーチ作品《お父さんと食事》
友政がこれまでも国内外で制作を続けてきた映像作品《お父さんと食事》が千住においてもリサーチの一環として制作された。まちの人びとを友政の “お父さん” と設定し、「いただきます」から「ごちそうさま」までの食事中だけ親子になる努力をする。普段、私たちが忘れてしまっているコミュニケーションの「型」が、改めて浮き彫りになるのだ。
“お父さん” と友政は、撮影当日に初めて顔を合わせ、その撮影は即興的に始まった。実際の家族ではないからからこそ生まれるストーリーや思い出、また、架空の娘だからこそ伝えられる日々の葛藤など、千住の “お父さん” と“娘”の会話は尽きない。「ごちそうさま」の瞬間、そこには確かに、食事を終えた親子の姿が浮かび上がっていた。
撮影風景
完成した映像作品は「たこテラス」で展示された